100名近くにもなるオーケストラの団員を牽引していかなくてはならない指揮者。
普通のコンサート会場での明るい照明の下でのステージで演奏するのとはわけがちがうのが、オペラ(歌劇)でのオーケストラピットに入っての指揮者の指揮棒です。
舞台の照明にかき消されてほぼ真っ暗な状態のピット内で彼らも演奏するのですから、いくら自分たちの譜面(パート譜)にスタンドライトがあるとはいえ、何かあれば指揮者の指揮棒を見なくてはなりません。
しかし指揮者の姿はもちろんのこと、指揮棒も間接照明で極力、舞台の照明に邪魔にならないように工夫されている薄暗さではそれを確認するのも容易なことではありません。
生粋のオペラ指揮者でもあったヘルベルト・フォン・カラヤンの指揮するオペラ上演中の指揮姿は神秘的ですらありましたが、宙をかき混ぜるように動くあの独特の指揮姿はよほど慣れたオーケストラメンバーでも確認しながらの演奏は至難の業であったに違いありません。
これはR.ワーグナーの楽劇「パルジファル」のリハーサル風景でのカラヤンの指揮棒の軌跡を長い露出で表わしたものです。
白い指揮棒は下からのライトアップで浮き出て見えますが、きっと彼らもこのように見えていたはずです。
オーケストラもやはりオペラをやるとなるとかなり緊張を強いられることがこれを見てもわかりますね。